いかがお過ごしですか？
入院中の父は
ぼんやりと生きています。
目次
覚悟をしていた
昨日、父は
目は開けていても
私が誰なのかも
分かりませんでした。
実を言うと昨晩、
私は覚悟をしていました。
いよいよ死ぬんだ、
と思っていました。
もう私ができる事は
何も無いので
心が波立つような事も
無かったです。
危篤状態から回復している！
今日、病院に行ってみると
父は車椅子に座っていました。
昨日は問いかけにも反応せず
たくさんの機械に繋がれていたのに、
今日は車椅子に
座らされていました。
あっちの世界と
こっちの世界を
フラフラと行きつ戻りつして、
この世に戻って来ました。
抗生物質が
肺炎に驚異的に効いたのです。
肺炎が治った訳では無いけれど
体が動くようになった父は
朦朧としたまま
予測のつかない動きをします。
その為
車椅子に乗せられて
ナースステーションで
見張られていました。
勝手に動く危ない高齢者は
看護師さんたちの目の届く所で
車椅子乗せられ、
整列させられているのです。
朦朧としている父の頭皮に・・
病室に連れて行きましたが
父は、まだ
頭がぼーっとしているようで
言葉は発しませんでした。
喋らない父は世話し易いのです。
ぼーっとしている内に
顔のガサガサを拭いたり
耳の掃除をしたりしました。
朦朧としながらも
頭が痒いらしく
父が左手で頭の掻いています。
私は「痒いの？」
と言いながら
頭を掻いてあげました。
私は父や母のお世話が長かったので
老人の世話で動揺するような事は
もう無くなった・・
と、思っていました。
でも、
父の頭を掻いてあげる時に
柔らかい白髪の生えた地肌に
フケの塊のような物を
見た時・・
息子が新生児だった時
同じような地肌になった事を
フラッシュバックの様に
思い出したのです。
新陳代謝の激しい新生児の頭皮にも・・
新生児の可愛い小さい頭に
剥がれた皮膚が固まって
白い瘡蓋のように
なっていました。
もう、24年前の事です。
私は心配で心配で、
左手で抱っこしたまま
息子の頭皮を
ベビーオイルを沁み込ませたガーゼで
そーっとふき取りました。
何度も何度もそれを繰り返し
長い時間かけて
息子の頭皮はすっきり
綺麗になりました。
新陳代謝の激しい、
新生児には
よくある事です。
父もまた、子供を育ててきた人。
今、父の頭皮にも
同じような皮膚の塊が
貼り付いています。
肺炎を繰り返しているから
お風呂に入れない為です。
父の頭皮を見て
息子が新生児の時を思い出し、
私は何故か心が強く揺さぶられて
しまいました。
父や母の事で
もう泣くような事は
無いと思っていたのに・・
なぜか、
父もまた私と同じように
子供を育ててきた人なのだ」と感じ、
泣いてしまったのでした。
父の病室から出て
車で我が家に帰るまで
涙が素直に
目から流れていきました。
理屈では片づけられない心
この悲しさは
どこから来るのでしょうか？
色んな事があったから・・
もう、親の事では
何があっても何を言われても
泣くような事は
無いと思っていたのに。
心にはやっぱり
理屈では片づけられない
柔らかい部分が
有りますね。
泣きながら家に辿り着いた私は
心のスイッチを
カチっと明るい方に入れて
まず、コーヒーを飲みました。
いろんな経験、
いろんな感情、
過去の全てが今の私ですけど
私には、まだまだ未来も有ります。
明るい方へ心を向けて
暮らして行きたいと
思います。
理屈ではどうにもならない
悲しい事もありますけど・・
そんな自分の気持ちは
ちゃんと認めてあげよう
と思います。
そして他にも悲しい人が
いらっしゃれば
「おかけになって お茶でもどうぞ」と
言ってあげられる自分でいたいです。
